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サンクロンの歩み

■きっかけは戦時中の食料研究

株式会社サンクロンの創業者である⾦⼦卯時⾬(かねこうじう)は1903年(明治36年)に福岡で医者の息子として生まれました。生まれつき体が弱く、中学1年生の時には脊椎カリエスにより1年間休学するなどの体験が金子の人生を決定します。この苦境から金子を救ったのは食事療法と日光浴でした。食の重要性を知り「医学の根源は農である」と考えた金子は九州大学農学部へ進学し、大学卒業後は旧⽇本軍の糧抹廠(りょうまつしょう:兵⼠の⾷糧と軍⾺の飼料を管理した旧⽇本陸軍の部署)で携帯食料の研究に携わります。そこで⾦⼦に課せられた研究課題とは、野菜の栄養素を効率よく補給することでした。私達が葉野菜を食べる時は、やわらかい葉を⻭で細胞を噛み潰して中の内容物を消化吸収しています。しかしながら⽣野菜を70回噛み潰しても細胞壁が壊れるのが11%程、温野菜にしても47%程であり、一般的な食事方法では栄養成分の効率的な補給が難しいことがその研究により判明しました。当時糧抹廠の⻑官であった栄養学者の川島四郎博⼠は研究結果を受けて、「植物の成分そのものを携帯⾷にする」という高い目標設定を行います。これにより金子はビタミンなどの成分を配合したサプリメントではなく、植物細胞液そのものを摂取できる⾷料の開発に挑むこととなりました。

研究の継続と素材選び

研究は終戦により道半ばとなってしまいました。しかしながら川島元⻑官の「新鮮で⻘々とした植物を漏れなく吸収できれば、どれほどの⼈間が助けられるか」との⾔葉に共感していた⾦⼦は⾃宅倉庫の地下でひっそりと研究を続けます。研究は多岐に渡り、素材についても一般的な野菜類にとどまらず、⾃⽣する雑草など様々な植物を材料に研究していました。そんなある日、金子は物資の運搬で活躍する軍⾺のため、野⽣動物の⾷事に注目していた時のことを思い出します。牧場での観察では⽜や⾺が青々としたクマザサを好んで食べていました。さらに研究を進める中で、冬眠前の熊がエネルギーを蓄える為に⼤量のクマザサを⾷べることにも気づきます。
そしてクマザサには、東北地⽅を中⼼として呼吸器疾患やかぜ、怪我の修復に良いとされ、⺠間で使⽤されてきた背景がありました。これらの考察から「⽜や⾺が丈夫になる新鮮なクマザサが容易に摂取可能であれば⼈の健康にも貢献できる」とのアイデアが浮かび、⾦⼦はクマザサを素材にした研究を開始しました。

■⽇本初のクマザサ医薬品の誕⽣

クマザサに着目した⾦⼦ですが、⼈間は⽜や⾺のように植物の堅いセルロースでできた細胞壁を分解する消化酵素を持ち合わせていません。そのため金子はクマザサの細胞壁を破壊し、細胞内の原形質液(原形質基質)を取り出す研究を開始しました。それは苦難の道であり、世界で最初に人が効率よく摂取できる形で、クマザサ細胞内の原形質液を取り出し、その特許を取得できたのは1950年(昭和25年)の事でした。抽出された液体は沈殿物もなく鮮やかな緑で、⾼濃度のクロロフィル(葉緑素)を含んだ溶液となり、各種ビタミンや必須アミノ酸も含まれていました。このクマザサ原形質液は服⽤を続けると病気の回復が早く、緑⾊野菜の摂取の少ない⼈や健康維持にも効果があることもわかりました。金子は、かつての糧抹廠の仲間たちから、この研究成果は⾷品ではなく、医薬品として世に出すべきと後押しされ、1954年5月に東京都中野区に当社の前身である太平生物化学工業株式会社を設立。同年に保険適⽤薬として厚⽣省(現厚⽣労働省)に承認を得ました。
発売当初は⾼濃度のクロロフィル(葉緑素)から「クロロン」と名付けられましたが、太陽(サン)の光を浴びて緑濃く育つクマザサの意味も併せ持つ名前にとの考えで「サンクロン」とその名称を変更し現在に至ります。

皆様に愛⽤されるクマザサ医薬品のロングセラーに

⾦⼦は、病気の根源は⽇頃の⽣活習慣にあると考えました。1994年にその生涯を閉じるまで、常に人々の健康に寄与することにその人生を捧げ続け、会社を経営する一方で昭和医科大学生理学教室に所属し、医学博士となるに至ります。そこでは自身の体質や経験から健康に対して哲学的に取り組み、医療や薬で保たれる健康「保健」ではなく、⾃ら率先して⽇頃から無意識に⾏っている呼吸や姿勢、⾷事や睡眠などの⽣活習慣を意識することにより健康を創り出す「創健」の重要性を訴え、1962年(昭和37年)にはその実現のために福岡において「日本創健学会」を立ち上げました。その中でサンクロンは「創健⽣活」をサポートする基礎薬としての役割を担っています。植物の滋養を体内に最大限に取り込むには、よく噛むことを意識して⾷べることが⼤切ですが、サンクロンは何度噛んでも吸収しきれない植物細胞の原形質液を豊富に含んでいます。また医薬品としてのサンクロンは、⾷欲不振、疲労回復、⼝内炎、⻭槽膿漏、⼝臭・体臭の除去が効能・効果として承認されています。
サンクロンは1954年(昭和29年)の保険適⽤薬承認から1995年(平成7年)の間、多くの病院・⻭科医院で投薬されてきました。そして市販薬(第三類医薬品)となった今でも⼩児からお年寄りまで幅広い⽅々に、引き続きご愛⽤戴いております。1973年(昭和48年)には、サンクロンの外用薬としての効力を生かした「サンクロン軟膏」を作り上げました。この軟膏は床ずれ、やけど、きれ痔、切り傷、化膿性創傷、にきび、⽿だれ、しもやけ、⽪膚のただれに効果がある医薬品として承認を得ています。株式会社 サンクロンはこれからも、サンクロン、サンクロン軟膏の他、クマザサ関連商品の研究開発を通して、皆様の健康創りに貢献してまいります。

クマザサ 液体医薬品 サンクロン 商品写真